CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
一般外科症例

犬の脾臓腫瘍(脾臓全摘出)

目次


犬の脾臓腫瘍について


犬の脾臓腫瘍は、比較的発生頻度の高い腫瘍の一つです。
犬の脾臓腫瘍は、1/3が良性のもの(血腫や結節性過形成、髄外造血など)、2/3が悪性のもの(血管肉腫や線維肉腫、肥満細胞腫、リンパ腫など)と言われています。
脾臓にできものができると、その病変が良性であれ悪性であれ、破裂をおこし急な出血を起こしてしまう可能性があります。出血を起こすと急激に血圧が低下しショック状態に陥り、命に関わることもあります。



犬の脾臓腫瘍を摘出した実際の症例


症例は12歳のイングリッシュ・コッカー・スパニエルで、
偶発的に脾臓腫瘤が見つかりました。
レントゲン検査画像です。
超音波検査画像です。
腹腔内に巨大なしこり(直径約8cm)が認められ、脾臓腫瘤であることが分かりました。
血液検査でも貧血や血小板減少が認められました。
画像検査で悪性腫瘍なのかの判断をすることはできません。かつ、今回は腹腔内出血をおこしてしまう可能性が高かったため、針生検は実施しませんでした。
基本的には、脾臓腫瘍の確定診断は脾臓全摘出をしたあとに病理組織学的検査を行うしかありません。

今回の症例も悪性腫瘍の可能性があること、および今後脾臓破裂をおこし命に関わる可能性があることなどから、脾臓全摘出手術を実施することになりました。
摘出した脾臓の外観になります。
腫瘤周囲には大網などの癒着が認められましたが、大きな出血もなく、手術は無事に終了しました。
病理組織学的検査では「肉腫(悪性腫瘍)」という結果でした。
手術時に同時に撮影したCT検査では、現時点では明らかな転移所見は認められませんでしたが、今後再発・転移をおこしてしまう可能性も高いため、定期的なチェックをしていく必要があります。


脾臓は沈黙の臓器とも言われ、今回の症例のように腫瘍もかなり大きくなってから見つかるケースも珍しくありません。
腹腔内出血を起こしてしまっている症例や、すでに転移が認められる症例も多いです(特に脾臓腫瘍で一番発生率が高いとされる血管肉腫で起こりやすいです)。その場合は、脾臓摘出をして、出血のコントロールができたとしても、余命の延長は望めない場合もあります。

そのため、早期発見が重要になります。
脾臓の異常の検出には、腹部超音波検査がもっとも有効です。
健康診断時には血液検査だけでなく、定期的な画像検査もおすすめします。


中野区の江古田の森ペットクリニック
執筆担当:獣医師 岩崎 真優子