CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
一般外科症例

猫の子宮腫瘍(子宮内膜ポリープ)

目次


子宮腫瘍について


犬、猫ともにまれな腫瘍です。これは主に、大半が若齢時に予防的に子宮卵巣摘出術(避妊手術)を受けるためと言われています。
犬の場合は良性腫瘍が多いと報告されていますが、猫の場合は腺癌や平滑筋肉腫、リンパ腫などの悪性腫瘍も多いと言われています。



猫の子宮腫瘍の実際の症例


今回ご紹介する症例は10歳の未避妊雌、猫種はアメリカン・ショートヘアーです。
少し前から外陰部からの赤い分泌物、発情周期の異常が認められ、かかりつけ医を受診。そこの病院で子宮の拡張を指摘され(子宮蓄膿症疑い)、抗生剤や止血剤などで経過をみていたそうです。
子宮の精査のため、当院へ来院されました。
元気、食欲などの一般状態は良好であるとのことでした。

当院での画像検査所見です。
レントゲン検査画像です。
超音波検査画像です。
子宮角〜子宮頚部まで子宮内部には占拠性病変が認められ、子宮腫瘍の可能性が考えられました。左右の卵巣には異常所見は認められませんでした。
血液検査では異常は認められませんでした。

明らかな転移所見が認められない場合の子宮腫瘍の治療の第一選択は子宮卵巣摘出術です。現在のところ、放射線療法や化学療法の有効性は不明です。
飼い主様と相談し、CT検査による全身の精査および子宮卵巣摘出術を実施することになりました。
摘出した子宮卵巣の写真になります。
病理組織学的検査では「子宮粘膜ポリープ(良性腫瘍)」と診断され、腫瘍も取り切れているとのことでした。左右の卵巣には異常は認められませんでした。


猫ちゃんの子宮腫瘍は無症状のことも多いですが、外陰部からの不正出血やホルモンの乱れに伴う発情周期の乱れ、悪性腫瘍の場合には癌性腹膜炎による腹水貯留、食欲廃絶、体重減少などの異常が認められることもあります。
また、猫の場合は子宮蓄膿症が併発していることも多いため、術前の血液検査などによる全身の評価も大事になってきます。

今回の症例は良性腫瘍であり、子宮卵巣摘出により、予後は良好であると予想されます。しかし、子宮腫瘍や子宮蓄膿症は、若いころに避妊手術を実施することで予防することができます。
避妊手術は本当にやったほうが良いの?麻酔が不安・・・などあれば、お気軽にご相談頂ければと思います。


中野区の江古田の森ペットクリニック
執筆担当:獣医師 岩崎 真優子