CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

免疫介在性溶血性貧血

免疫介在性溶血性貧血を紹介します。

免疫とは体の中に入ってきた細菌やウイルスなどを排除するためのシステムです。
免疫は大きく自然免疫と獲得免疫に分けられます。

自然免疫とは体に侵入した体内に侵入した細菌やウイルスととにかく早く戦うためのシステムです。
生まれつき持っている免疫反応であるため自然免疫と呼ばれます。

それに対して獲得免疫とは、自然免疫で倒しきれなかった細菌やウイルス、腫瘍細胞などと戦うためのシステムです。
自然免疫から敵の弱点を教えてもらい(抗原提示)、その弱点にあった武器を作り、その敵に合わせた戦い方をします。

獲得免疫を担うのがリンパ球で、B細胞とT細胞に分けられます。
B細胞は抗体を産生します。抗体は血流に乗って体液中の敵を攻撃するため「液性免疫」と呼ばれます。
T細胞はウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を攻撃するため「細胞性免疫」と呼ばれます。
この獲得免疫は普段は自分とそれ以外を明確に区別して、自分のことを攻撃することはありません。

しかし何かの拍子に自分のことを攻撃してしまうようになってしまう病気が自己免疫疾患で、自分の赤血球を攻撃するようになってしまう病気を「免疫介在性溶血性貧血」といいます。

免疫介在性溶血性貧血は赤血球を標的とした抗体が産生されることで、赤血球が破壊され(溶血)、貧血を起こしてしまう病気です。
<抗体が赤血球を攻撃することで溶血します>
<抗体により赤血球どうし結びいて凝集します>
<赤血球の凝集は肉眼的にも観察できます>
症状としては貧血による元気食欲の低下や粘膜の蒼白、赤血球が壊されることで黄色い色素であるビリルビンが産生され黄疸を示します。
またこの疾患では同時に血小板も攻撃されてしまうことがあります(エバンス症候群)。血小板は出血を止めるための血球の一種で、この数が減ってしまうと消化管出血に伴うメレナや皮膚の紫斑(青あざ)がみられます。
<貧血により可視粘膜が白くなる>
この病気の原因は特発性と続発性に分けられ、続発性は悪性腫瘍、ウイルス感染、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患に伴ってみられます。

治療方法はステロイドや免疫抑制剤による免疫抑制療法が主体です。
免疫抑制療法が効果を示すには時間がかかるため、その間貧血の進行が命に関わる場合に輸血療法を行うこともあります。
免疫抑制療法が効果を得られない場合、赤血球の破壊を行う場である脾臓の摘出を行うこともあります。
また血栓ができやすい疾患ですので、血栓治療薬も併用します。

死亡率は30~40%ほどある危険な疾患です。
緊急疾患ですので、すぐに動物病院を受診してください。

執筆担当:獣医師 三浦 篤史
東京都中野区江古田4-37-4 TEL:03-5942-5855
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