CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
一般外科症例

前十字靭帯断裂(TPLO:Tibial Plateau Leveling Osteotomy・脛骨高平部水平化骨切り術)

前十字靭帯とは後肢の膝関節の内部にある太い靭帯で、歩行や起立する際には常に負荷がかかります。犬は人と異なり常に後肢を曲げた状態で起立しているのと、膝の骨の形状的に、人よりも負荷がかかりやすい状態にあります。特に脛骨のTPA(脛骨高平部角)と呼ばれる角度が高いほど前十字靭帯に負荷がかかりやすくなっています。
そういう形態学的な特徴などから、犬や猫はジャンプしたり、転んだりというきっかけだけでも、前十字靭帯が切れてしまうことがあります。前十字靭帯が断裂すると負荷がかけられず、挙上や跛行といった症状が出ます。同時に半月板という軟骨を損傷することもあります。
断裂した前十字靭帯は自然に戻るということはなく、手術による外科治療が必要になるケースがほとんどです。手術には人工靭帯により固定する方法(ラテラルスーチャー・Flo法)やTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)という方法があります。近年ではTPLOの方が機能回復が良いという報告が多く、TPLOを行う症例が増加してきています。
TPLOはTPAを減らすことで靭帯が断裂した状態でも負重を可能にする、機能的安定化術という方法です。特殊なサジタルソー(ノコギリのようなもの)で骨を円形に切断し、TPLOプレートと呼ばれるロッキングプレートで固定します。
左が前十字靭帯断裂の患肢、右が正常肢です。下の脛骨という骨が左(前方)に飛び出ているのが確認できます(CrTT:脛骨前方推進力)。負重をかけると脛骨が前方に飛び出てしまうため、痛みを伴い挙上や跛行といった症状が出ます。
TPLOの術後です。円形に骨きりを行い、高平部と呼ばれる部分を回した状態でロッキングプレート・スクリュー固定しています。
左が術前のTPA(約32°)で右が術後TPA(約6°)です。有意にTPAが減少しているのがわかります。これにより、負重をかけても脛骨が前方に飛び出なくなり歩行が可能となります。この症例は術後3日ほどで患肢の負重がでてきており、1ヶ月ほどで走るくらいまで回復しています。
半年もすると骨切ラインは完全に見えなくなり、骨が癒合しているのがわかります。プレートは外しても大丈夫ですが、ロッキングシステムなので外さなくて良いとされています。
TPAの角度が高いほど回転距離が大きくなります。いくつか症例のレントゲンを紹介します。
20kgの雑種犬です。両側の断裂でした。
反対側です。
黒ラブです。
40kgのバーニーズ・マウンテン・ドッグです。
18kgのシェトランドシープドッグです。TPAは32°でした。
12kgの雑種犬です。TPAは27°でした。
5kgのチワワです。TPA20°でした。最近では小型犬種のTPLOも行われるようになりました。術後の運動能力の維持が他の術式に比べ良いためです。


担当 獣医師 磯野