CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
一般外科症例

若齢で頚部椎間板ヘルニアを発症し、手術により改善が認められた犬の症例

今回ご紹介するのは犬の頸部椎間板ヘルニアについてです。

犬の背骨(脊椎)は頭側から、頚椎が7個、胸椎が13個、腰椎が7個、仙椎が3個の骨が連なってできており、椎間板とはこれらの骨同士の間をつないでいる組織です。椎間板はゼリー状の髄核とそれを輪状に包む線維輪という物質で構成されており、着地した時などの外からの衝撃を軽減するクッションのような役割をもっています。

椎間板ヘルニアは、この髄核や線維輪が変性を起こして飛び出し、脊椎の中を走る脊髄神経を圧迫することで発生します。原因は加齢や強すぎる外力などで、ダックスフンドやパグ、ビーグルといった軟骨異栄養性犬種と呼ばれる髄核の変性を早期に起こす犬種に好発します。頸部椎間板ヘルニアを発症すると、頚部の痛みが強いため首をあげることができない、四肢の麻痺、歩行障害など様々な神経症状を呈します。重度の場合四肢の完全麻痺や自力排泄ができなくなったり呼吸不全に陥り死に至る事もあります。こういった症状が認められた場合、まず触診、血液検査、レントゲン検査、グレード分類などを行い、病変がどこにあるのか調べ、他の疾患の除外(脳、脊髄腫瘍、関節炎等)を行うために、MRI検査に進むかどうか検討します。

頸部椎間板ヘルニアの重症度は頚部疼痛のみ(グレードI)、頚部痛の有無に関わらず自力歩行は可能な不全麻痺(グレードII)、自力歩行が不可能な四肢完全麻痺(グレードIII)の3つに分類され、グレードIでは内科治療からスタートする場合が多いですが、グレードII以上は外科手術の適応となります。

この症例は4歳のパグで後肢の跛行、千鳥足で歩くといった主訴で当院を受診されました。 まず、触診では後肢の反応が鈍っていました。さらに1歳前後の若齢期に失禁したり、どこか痛そうにするといった症状を示したことがあり、脳神経、関節の問題等を疑い、まずレントゲン検査、血液検査を行いましたが異常は認められず、MRI検査を検討することになりました。その間、鎮痛薬を投与していましたが症状は改善せず、下半身の痛み、前肢にもフラつきが出てきて自力でトイレに行くこともままならない状態まで進行してきました。比較的若く犬種がパグということもあり、パグに多いとされる遺伝性疾患の壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎とも呼ばれる)も考慮して早速MRI検査を行いました。
MRI検査では脳炎の所見は認められず、頚部において第3、4頚椎間の椎間板がヘルニアを起こし、左腹側から脊髄を圧迫していることが分かりました。以上のことから第3、4頚椎間の椎間板ヘルニアと診断しました。

早急な外科手術が必要という判断となり、すぐに手術を行いました。
椎間板ヘルニアの手術は脊髄を圧迫しているヘルニア物質を除去して圧迫を解除する、減圧術という方法で行います。今回は頚部の腹側よりアプローチし(ベントラルスロット術)、ヘルニア物質を取り除きました。
術後は足先のマッサージや腰を支えて起立させ、補助して歩行させるリハビリを行いました。最初は少し足をひきずっていましたが、2~3日で自力歩行可能となり、排尿も出来るようになり、疼痛の改善も見られました。術後約3ヶ月が経過し、現在は痛みも麻痺もなく元気に歩きまわる事が可能となっています。
椎間板ヘルニアの治療において重要な点は

・発症後治療に入るまでに時間がかかってしまうと改善率が低下してしまう。
・内科治療では根治させるのが難しく、再発しやすい。またステロイド等の長期投与で副作用が出る事がある。
・早期の外科手術後は痛みや麻痺といった症状の改善が速やかであることが多い。
というところです。
椎間板ヘルニアは頚部だけでなく、胸腰部にも発生します。歩き方がおかしい、急に首や腰を痛がるようになったといったワンちゃんからのサインを見逃さないことが重要です。もしこのような変化を感じた場合は様子を見ずに早めに受診されることをおすすめします。