CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
一般外科症例

猫の膿胸と大腿骨骨折

目次


症例について


今回ご紹介する症例は約二ヶ月齢の猫です。
公園でぐったりしていたのを連れてきてもらいました。
来院当日は呼吸がかなり早く、歩くこともできませんでした。食欲もなく、水もほとんど飲まない状態でした。

レントゲンや超音波検査によって左足の大腿骨という骨の骨折と、膿胸という胸の中に膿が溜まってしまう病気であることが分かりました。
以下の画像は膿胸の手術写真とX線写真です。



膿胸の治療


呼吸が改善しないと命にかかわるため、まずは膿胸の治療を行いました。
胸にドレーンと呼ばれるチューブを入れ、胸の中の膿を出し、抗生剤で治療を行いましたが、なかなか完全には良化しませんでした。
肺の一部に壊死したところがあり、それが原因であると考え手術による摘出を行いました。

手術は、右の肋骨の間から肺にアプローチして、壊死した肺の血管や気管支を縛り、摘出するという方法で行いました。
切皮し胸を開けると膿だらけで、肺の一部は胸壁に癒着していました。
癒着した部分を丁寧に剥離し右の中葉と呼ばれる肺葉を切除し、胸の中を丁寧に洗浄し終了としました。

術後肺は徐々に良化し、普通の猫と変わりなく生活できるようになりました。



大腿骨骨折の治療


次に足の骨折の手術を行いました。
通常成猫では大腿骨の骨折にはプレート・スクリューという強固な固定を行うのが一般的です。
しかし本症例は折れている場所が股関節に非常に近く、本来のやり方であるプレートとスクリューで固定することができませんでした。
そのため、キルシュナーワイヤーと呼ばれるピンと、ラグスクリュー法というネジの固定を組み合わせて固定しました。 術後はすぐに足を使って歩くようになり、レントゲンでも骨折部のズレ等はなく順調に治癒していきました。
約2ヶ月後にはピンを抜き、現在では走り回ることも可能です。

執筆担当: 獣医師 磯野 新