CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

眼窩と下顎の2箇所に根尖膿瘍(眼窩膿瘍)ができてしまったウサギの症例

今回ご紹介するのはウサギの根尖膿瘍(場所によっては眼窩膿瘍とも呼びます)についてです。

ウサギの根尖膿瘍は歯の根元にチーズ状の膿がたまってしまう病気です。症状は顎が腫れ、よだれが持続的にでたり、食べる時に痛みがでて食欲がなくなってしまうことがあります。
原因は、生まれつき歯列が悪かったり、チモシーをあまり食べないことで歯が悪くなり、そこからの細菌感染が関連していると言われていますが、はっきりとしたことは分かっていません。

治療は内科的に抗生剤や鎮痛剤、強制給餌等による対症療法を行い、良化しない場合には手術による切除、洗浄が必要になることもあります。手術方法は確立されておらず、穴を開けて膿を膜ごと切除する方法が一般的に用いられます。術後には抗生剤を長期間使用していきます。しかし骨が溶けてしまっている場合には完治が難しくなります。

今回は下顎と上顎の2箇所に膿がたまってしまい、下顎が腫れ、目が出てきてしまったウサギの症例を紹介します。

症例は4歳のライオンラビットで、最初はよだれが多いということで来院されました。その時には歯列はガタガタとしており、右下顎の腫れがありました。レントゲン検査で下顎の骨が溶けているのが確認されたため根尖膿瘍が原因と考え、抗生剤で治療したところよだれは良化しました。
しかし、その後目が飛び出てきてしまったということで来院されました。レントゲンだけでは頭の骨の中を詳しく見ることは困難で、目が出てきてしまった原因を確認するために後日CT検査を行いました(腫瘍または膿瘍)。治療には、物理的に圧迫、溶解している膿を出さなければ良くならないと考え、手術を行うことにしました。
下顎の手術では、溶けてしまっている骨を一部切除した後、中の膿を洗浄し、カルシウム剤を添付しました。穴は開けたままで縫合しました。

(術中の写真を載せます。苦手な方はご注意ください。)

目の奥の手術は、CT検査から、歯からのアプローチが困難であったのと、目が飛び出てきてしまい視力も失っていたため眼球ごと摘出し、可能な限りの膿を排膿した後に中を洗浄する方法を用いました。縫合部にはドレーンと呼ばれるチューブを設置しました。
術後はしばらくペースト状のフード(MSライフケア)しか食べられませんでしたが、抗生剤や点滴、オーナー様の看病によって少しずつペレットを食べるようになってくれました。目の膿瘍は数日後には膿も出なくなりドレーンを抜去しその後は問題なく経過しました。下顎はその後も排膿が続きましたが、定期的に洗浄を行うことで状態は安定していました。
この症例は根尖膿瘍の発見から270日目に呼吸状態が悪くなり亡くなってしまいましたが、それまで質の良い生活を送ることが出来ました。
今回は眼の奥に膿瘍があり、CT検査まで行わないと原因が特定できない根尖膿瘍でした。眼球摘出というオーナー様にはなかなか受け入れがたい治療法でしたが、術後はオーナー様の満足も得られ、本人の生活の質をあげることができました。

うさぎの根尖膿瘍ははっきりとした治療が確立されていない疾患で、完治させることが難しい疾患です。歯が悪いことが原因であるため、普段からペレットばかりをあげるのではなく、チモシーを沢山食べることで歯を摩耗させ、良い状態に保つことが重要です。また根尖膿瘍になってしまっても内科的に落ち着かせたり、今回のように手術で状態を良くすることができます。
普段から病院で歯のチェックを受け、悪い歯がある場合には早めに治療していくことも重要です。また、顔の腫れがあったり、よだれが多いなどの症状がある場合には早めに病院を受診することをお勧めいたします。