CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

急性腎障害(AKI)と血液透析

目次


急性腎障害について


急性腎障害とは何らかの理由で数時間から数日の間に腎臓の機能が急激に低下する病気です。
腎臓の機能が低下すると尿とともに老廃物を排出することができなくなり体の中に蓄積していきます。症状は元気、食欲の低下、嘔吐や下痢、排尿しないなど様々です。
基本的な治療法は輸液や栄養管理、基礎疾患の治療ですが、これらの治療に反応せず1-3日と短い期間でなくなってしまう場合もあります。そのため基本的な治療に反応がない場合は、腎臓の機能を肩代わりする血液透析という治療を行わなくてはなりません。



血液透析について


血液透析とは動物から血液を取り出してダイアライザーという装置で浄化し、体に戻す治療法です。
人では慢性腎臓病の末期患者に対して行われることが多いですが、獣医療では技術的に長期間の透析を行うことが困難です。そのため実施は回復の見込みがある急性腎障害や中毒物質の除去などに限ります。



急性腎障害に対して血液透析を行った実際の症例


今回急性腎障害の症例に対して血液透析を行ったためご紹介します。
症例は雑種猫、去勢雄、10歳3ヶ月、体重2.6kgで食欲不振を主訴に紹介元病院を来院しました(第1病日)。
尿素窒素、クレアチニンの上昇が認められたため、急性腎障害として入院下で点滴治療を開始しました。
しかし排尿は全く確認されず尿素窒素、クレアチニンは急激に上昇していきました。第3病日、一般的な内科治療に反応しないため血液透析を希望して当院に来院しました。
来院時の血液検査です。カリウムの上昇も認められました。
カリウムは食事中から摂取するミネラル成分で、腎臓から体の外に排出します。急性腎障害で尿が出ない状態になるとカリウムは体の中に蓄積していきます。カリウムは心臓の正常な働きを担っているのですが、8.5mEq/L以上に上昇した場合いつ心停止してもおかしくありません。
この症例は本院に来る前に点滴を行っていましたが、排尿はなく過剰の水が体の中に入ってきた結果、胸の中にあふれてしまい肺の拡張を阻害して呼吸が苦しくなってしまいました。
この症例は合計4回透析を行いました。3回目の透析終了後に排尿が確認され、それ以降は透析なしでも尿素窒素、クレアチニンは低下していきました。
血液透析では除水(じょすい)という血液中から過剰な水分を除去することができます。この症例も過剰な水が除去されて肺野は正常に戻りました。
急性腎障害は一般的な内科治療では点滴以外にできることがほとんどありませんが、排尿がない状態での過剰な点滴はこの症例のように胸水の貯留や肺水腫を引き起こし、生存率の低下を招いてしまうデータが出ています。
内科治療に反応がない場合は早期の血液透析治療への移行が必要になります。
これは血液透析を離脱して約3年後の血液検査になります。尿素窒素、クレアチニンは正常範囲内にまで低下しており、現在は無治療にて経過観察となっています。
急性腎障害によりダメージを受けた腎臓は完全に元通りとは行かないまでも、数ヶ月から数年かけてその機能を回復させていきます。