CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
一般外科症例

猫の子宮蓄膿症(パイオメトラ)

「子宮蓄膿症」とは子宮内で細菌が増殖し、膿がたまってしまう病気です。
①開放性子宮蓄膿症(子宮頚管が開いていて、陰部より膿が排泄される)
②閉鎖性子宮蓄膿症(陰部より膿が排泄されない)
の2つに分けられます。

子宮蓄膿症の臨床症状は食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満など様々であり、また、閉鎖性子宮蓄膿症もあるため、陰部からの排膿については認められない場合もあります。





まず、犬と猫の生理(発情周期)について簡単にご説明します。

犬の発情周期は6〜12ヶ月であり、年に1〜2回発情期がきます。
発情期(排卵が起こる)の後は約2ヶ月の発情休止期(=黄体期)に入ります。発情休止中は卵巣に黄体という組織が形成されます。この黄体から作られる性ホルモン(プロジェステロン)は赤ちゃんの発育にはとても重要でありますが、赤ちゃんがいない場合には子宮内に細菌が繁殖しやすい環境を提供してしまいます。
そのため、子宮蓄膿症の発症はこのプロジェステロンが関与しているとされ、この発情休止期に起こることがほとんどです。

一方、猫は繁殖季節(2〜4月と6〜8月)があること、交尾排卵動物であることが犬と大きく異なっています。
猫の発情周期は2〜3週間であり、年に約2〜3回発情期がきます。
しかし、発情期は日照時間に左右されるため、室内飼いの猫は発情期が長くなったり、季節関係なく発情がきたりもします。
猫はこういった犬との発情周期の違い、犬と比べて避妊手術をしている割合が多いこと等から、子宮蓄膿症になる割合は少ないと言われています。
今回の症例は8歳の雑種猫、未避妊メスでした。
3日前からの元気食欲低下、陰部が汚れているとのことで来院されました。
40.8度の発熱が認められ、全身状態はかなり悪い状態でした。
レントゲン画像検査所見です。
子宮の位置に軟部組織陰影が認められ、小腸が頭側へ押されています。
超音波画像検査所見です。
子宮と思われる陰影の拡張および子宮内部に膿のような液体が溜まっている所見が認められました。
血液検査では白血球数の増加が認められ、感染や炎症が起きていると考えられました。

以上のことより、子宮蓄膿症を強く疑いました。
子宮蓄膿症の治療方法は、内科療法と外科療法(子宮卵巣摘出手術)があります。

内科療法は抗生物質の投与、黄体退行作用をもつプリスタグランジンF2αやプロジェステロン受容体拮抗薬などのホルモン製剤の投与があります。しかし、ホルモン製剤は薬の副作用や薬の効果が認められないことがあること、治癒したとしても高率で再発する可能性があること等から、子宮蓄膿症の最善の治療方法は外科療法(子宮卵巣摘出手術)とされています。


本症例も抗生物質の投与を開始しつつ、早急な外科療法(子宮卵巣摘出手術)を実施することとなりました。

↓↓(術中の写真を載せます。苦手な方はご注意ください。)↓↓


手術時の写真です。
摘出した子宮と卵巣です。
子宮内部には膿が大量に貯留していました。
病理組織検査では細菌感染を伴う重度の子宮内膜炎(子宮蓄膿症)と診断されました。
卵巣には異常が認められませんでした。
猫の場合、原因が子宮・卵巣の腫瘍ということも多いですが、今回は腫瘍性変化は認められませんとのことでした。

術後は点滴治療、子宮内の膿の細菌培養検査にそった抗生物質の治療を実施し、術後2日目より回復が認められ、ご飯も自ら食べてくれるようになりました。
術後6日で元気に退院していきました。



子宮蓄膿症を発症した場合は、大量の細菌が体の中で繁殖し、比較的早期に全身への影響があらわれます。進行すると、全身性の炎症反応や腹膜炎、敗血症につながり、多臓器不全やショック症状を起こし、亡くなってしまうこともあります。
そのため、この病気は早期発見・早期治療が非常に大事です。

また、若いうちに避妊手術を行うことで子宮蓄膿症は予防することができます。
避妊手術に対して不安がある、全身麻酔が怖い、などあれば、お気軽にご相談頂ければと思います。



執筆担当:獣医師 岩崎